Vol. 10 分解(2002/08/08)


さて前回は、TB−17のエンジンは問題なく回ることを報告しましたが、今回は、いよいよ分解に入ります。長年回される事の無かったナットは錆と熱で固着していることが多いはず、細心の注意をはらって進めないと分解の途中でパーツを壊してしまうこともあります。それでは焦らず丁寧に作業を進めます。

まずは、分解前の姿から。また、この姿となって蘇るのはいつの日なのだろうか?
ボンネットを外すとエンジン全体が現れます。強制空冷のファンダクトの形で空気の流れが想像できますね。ハーネスは一つ一つ外しながら荷札を付け、組み立てる時に間違えの無いよう記録します。それと、今の時代、便利なのがデジカメでしょう。各部を分解前に撮影して取り付け状態を記録して置きます。
エアークリーナー、燃料タンク、セルモーターと外して行きます。
心配していたEXマニのナットも上手く外れてくれました。今回、このスタッドボルトが欠けてしまうのを一番心配していました。ガスケットも極力再使用できるように丁寧に剥がします。
並列2気筒のシリンダーが姿を現しました。空冷ツインのオートバイのエンジンに似ていますね。
反対側を覆うシュラウド(導風板)を外して行きます。
シリンダーがむき出し状態となりました。それにしても汚れが凄いです。
ダクトを外すと中から強制空冷ファンが姿を現します。ファンはクランク軸より上部にあり、ギヤで増速され、冷却用の風量を増し、また同軸上のダイナモは発電量を増す設計です。シンプルですがよく考えた設計ですね。
ステアリングのギヤーボックスと足回りを外し、残ったのはエンジン単体ですね。やっぱり、トラクターはエンジンにタイヤと椅子を取り付けた機械ですね。
シリンダー横の4本のパイプはプッシュロッドです。つまり、弁機構はOHVですね。
シリンダーフィンのUPです。各気筒独立したシリンダーとヘッドを持ち、部品としても各気筒共通なようです。部品交換や修理の面では画期的な発想ですね。フィンの隙間は油とホコリで目詰まり状態でした。これでは冷却高率が悪いでしょう。
ヘッド上のプラグの様に見えるのは燃料噴射ノズルです。ここには噴射ポンプから高圧の軽油が送られて来ます。その下に見える部品がグロープラグです。エンジン始動の際には数十秒間通電してエンジン内部を温め、着火しやすくします。
ヘッドカバーを外したところ、ロッカーアームはドロドロの汚れがこびり付いていました。これでは旨く潤滑できないでしょう。綺麗に洗浄してタッペット調整もしなくては。
以上、分解の様子を報告しましたが、この後、こびり付いた汚れを落とします。何しろディーゼルエンジンはガソリンエンジンと比べ汚いです。外部も汚ければ内部もススだらけ、この汚れが作業を進める手を妨げます。その反面、空冷エンジンは錆の発生が少なく、構造もシンプルです。たぶん故障も少なく、丈夫で長持ちだったのでしょう。今でも数多くのTBの空冷トラクターが生き残っているのは、そんなことが要因なのでしょう。

子供の頃から分解は大好きでした。親にせっかく買って貰った高価なオモチャを、たちまち分解してしまって怒られたり、目覚まし時計やオルゴールなど、特に回転する歯車の入った物は中身が気になって仕方がありませんでした。但し、悲しいかな子供にとって分解とは、再び組み立てることなど頭の中にはありません。バラすことに夢中になるだけ、つまり分解とは壊すことに他なりません。(多くの男性には経験済みでしょう)
やがて、壊しまくっていた少年も、ある時期、分解した物を再び組み立てることに挑戦する様になりました。自分の手で組み立てた物が再び動き始めることに、ある種の感動を覚えたのです。これが進化して、壊れて不動となってしまった物を自分の手で分解、そして組み立て、再び調子よく動くようになったときの感動と満足感を味わってしまった人間が、大人になってのメカ好きの人たちなのでしょうね。

戻る